~Midori's Journal~

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<国際ハッカー集団アノニマス>ダークヒーローを応援してしまうのは人情

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<国際ハッカー集団アノニマス>ダークヒーローを応援してしまうのは人情

 1年前、国際的ハッカー集団「アノニマス」が中国・香港へのサイバー攻撃の予告を出したのを思い出す。
アノニマス」のマークといえば、「V」のマスク。あの笑っていながら泣いるようにも見える、赤らんだ頬のヒゲマスク。映画「Vフォー・ヴェンデッタ」(監督ジェームズ・マクティーグ、脚本ウォシャウスキー兄弟・2005)以来、「抵抗と匿名の国際的シンボル」としてお馴染みだろう。

  今では世界のみならず日本国内でもパーティやロックフェスティバル、ハロウィーンで「V」のマスクは定着した。筆者もパーティ・イベント用にと映画公開当時、「V」のマスクを2個eBayで購入した経験があるほど身近な存在となったいる。(今はAmazonで税込1000円で買える。)

映画「Vフォー・ヴェンデッタ」冒頭で「V」が唄うように語るセリフ。
「Remember, remember, the fifth ofNovember, the gunpowder treason and plot. I know of no reason why the gunpowder treason should ever be forgot」
(忘れるな、思い出すのだ、あの11月5日を、あの火薬陰謀事件を。あの火薬陰謀事件を忘れられるわけがない。…)

これは、言わずと知れたイギリスの伝統的な子守歌でマザー・グースの一説の引用。

映画は英国歴史上の実在の事件、1605年11月5日英国上院議場の火薬爆破未遂事件の首謀者ガイ・フォークスがモデルだ。今でもイギリスでは、11月5日は「ガイ・フォークスナイト」といってガイを模した人形を引き回し焼き捨てるお祭りが存在し、その日の夜は花火大会で英国の街中が大騒して楽しむのだ。

 10月31日のアメリカ文化であるハロウィンを巻き込み始まるお祭りは、11月5日のガイ・フォークスナイトにクライマックスを迎える。 盛大な花火とともに街中引き車で引きずり回したボロボロの人形をたき火に放り込み、大人も子供も楽しみ喜ぶ光景は、筆者にとって奇妙奇天烈なお祭りだったのを覚えている。

 楽しそうに子供が人形をたき火に放り込む、そういうお祭りだと知っていてもなんとも怖いものである。 そこには「正義と悪」、もしくは「正義か悪」二極だけの綺麗ごとでは立ち行かない、歴史上の忘れてはならない事件・出来事があったのだ。

 ガイ・フォークスウェールズでは国家反逆者的存在、スコットランドでは自由のために戦った英雄的存在。法に触れてでも「誰かがやらねばならぬ」と、大きな権力に反逆する存在、そう、ガイ・フォークスはダークヒーローなのである。
実在のダークヒーローといえば、最近ではジュリアン・アサンジ氏も「V」のマスクをつけていた。
 
 フィクションでは「バットマン」「スパイダーマン」など、マスクで顔を隠し、心に闇を秘めた存在。日本最古のダークヒーローは嵐寛十郎の演じる「鞍馬天狗」だと思うが、こちらも幕末に覆面をかぶって幕府に反逆している。法に背いて悪を討つのは「必殺仕掛人」、藤枝梅安が黒子衣装で顔を隠して闇に葬り去る。石ノ森章太郎先生の作品もマスクのダークヒーローだらけ。藤岡弘が扮する初代「仮面ライダー」も孤高のダークヒーロー。変身すると「大自然の使者・仮面ライダー」と、違法改造バイク乗り回して悪を退治してゆく。

 「アノニマス」との共通項はマスク(匿名性)だろう。マスクは、同時に人格矯正装置であり様式美。今風に言えば「中の人」が変わろうともマスク(匿名)さえあれば、フィクション・現実世界問わずダークヒーローは時代を超えて存在し続ける、というわけだ。

アノニマス」の決め台詞は「We are Legion(大群)」ですが、大群とは一体何人くらいいるのだろうか?

ネット上で、 その質問にアノニマスは「9000以上だ!」と答えている。実はこれは、ドラゴンボールベジータスーパーサイヤ人化した悟空の戦闘力をスカウターで計測したときに、
 
「It’s over nine thousaaaaaan!」
ベジータのモノマネしながら)と叫ぶのが元ネタ。

これは「ギャップ萌え」というところだろう、国際的ハッカー集団という恐るべき存在がジャパニメーションに影響を受けまくってるところに正直親しみが湧いてしまう方々が多い筈。

 2014年の中国・香港へサイバー攻撃予告の理由は、香港での民主的選挙を求めるデモの弾圧に対し行うというけん制であった。 実存したダークヒーローのガイ・フォークスを象徴とした「アノニマス」。
サイバー攻撃を実行予告しても、国や世界はなんら変わらない。」と、そんなことは「アノニマス」自身が最もよくわかっていることなのである。
それでも誰かがやらねばならぬ。
 
昨今の国内デモにしても言える事だが、表面だけ見て一方通行にヒステリックに騒ぐのは誰でもできること。騒ぐ時は、いかに論理的に静かに騒ぐか。それを忘れてはならない

そんな現実やフィクションのダークヒーローたちを応援したくなってしまうのは人情ではないだろうか。